まつげエクステの話②
そもそも、あれだけいた他のスタッフはなぜ辞めてしまったのか。
そしてあれだけ多くの人数が一斉に辞めるほどの何かがあったにも関わらず、なぜ彼女は働き続けているのか。
朝九時から夜七時まで、一時間おきの予約枠は一週間先までいつも埋まっている。
彼女は出勤し、店内の清掃を済ませ、いつものカントリーミュージックをかけて、恐らく殆ど休憩も無しに、朝から晩まで一人きりで店を任されている。
オーナーらしき男性が出入りしているところを二回くらい見たことがある。でも彼はレジから集金をしに来ているだけ。
そこで閃いた。
彼女はあのオーナーの愛人なのでは?
だから他のスタッフが店を離れていっても、彼の側でただ黙々とまつげをつけているのではないか。
二人の関係に嫌気がさして、あとのスタッフが辞めてしまったのかも。
いやでもそんな愛人関係、なんの旨みも無い。
娘か。
それなら彼女はオーナーの娘なのでは無いか。
スタッフに手当たり次第手を出して、それが芋づる式に明るみに出て、みんな辞めてしまったけど、そんな父親でも父親なんで。的な感じ。
見た目の年齢から言ってもありえそう。
そしてもう一つ気になるのが、たまに新しい店員が雇われて、
ああよかった、これで彼女の負担が減るとほっとするのだけど、
二、三ヶ月後には皆姿を消していること。
やっぱりこの店、何かあるに違いない。
知りたい。
彼女の施術を受けながら、全ての視界を奪われた私の妄想はいよいよ止まらない。